主演:横浜流星・清野菜名
日本テレビ系 (日曜日22時30分~)
【内容・ネタバレ含む】
【復讐、その先…】
父・哲也(田中圭)を殺された森島直輝(横浜流星)は、復讐のためだけに生きてきた。ついに父が殺された根源が佐島あずさ(白石聖)であることを突き止めた。「パパ、これ終わらせないと俺は前に進めない。じゃあ…いってきます」直輝はそう言うととどめを刺そうとナイフを持ってあずさに襲いかかる。しかしそのナイフはあずさを庇って止めに入ったミスパンダ(川田リコ・清野菜名)の腹部に深く突き刺さってしまった。
病室でベッドに横たわるリコはまだ意識が戻らないようだ。傍らでリコを見守る直輝は、直輝が催眠をかける前の姿・川田レン(清野菜名)とのことを思い出す。『私、直輝さんのことが好きです』『直輝さんの力になりたい』控えめな性格だが純粋で真っ直ぐなレン。「俺は復讐のために何度も君を利用してしまった。君の気持ちも考えず…」と後悔する直輝。そしてレンに催眠をかけた後の姿・ミスパンダ(リコ)を思い出し「ミスパンダ、君は俺のヒーローだった」「君と一緒だったから目的を最後まで果たすことができた、ありがとう」と感謝する。「(俺が一緒に居たいのは)リコだよ!」あの時君に言った言葉は嘘じゃなかった…と眠ったままのリコの手を握ると病室をあとにする。
レンがアルバイトをしている囲碁喫茶GOBANでは、レンの囲碁の師匠であり、親代わりのような存在である店長の加賀春男(升毅)とその妻・佳恵(椿鬼奴)が1ヶ月も眠ったままのレンを心配している。「お腹の傷はとっくに治っているっていうのに、このまま目覚めなかったら…」という春夫の側で、佳恵はオレンジの皮で写真の黒く塗りつぶされた部分を消そうとしている。リコ、母・麻衣子(山口紗弥加)、レンの3人で写っている写真。レンは「リコはお母さんの愛を受けないまま死んじゃったからせめて写真の中だけでもふたりきりにしてあげたい」といって自分を黒く塗りつぶしてしまっていた。「やっぱり3人一緒がお似合いだよ」と佳恵はいう。
開店前のGOBANに直輝がやってくる。「レンさんのことで謝りたくて」という直輝に春男は「謝って済むと思ってるのか」「あんたがミスパンダになんかするからだ!」と直輝の肩を掴む。そして「レンは純粋にお前を思っていた、なのにお前はその気持を…。もしレンが目を覚まさなかったら俺は絶対に許さねえからな!」と怒りをぶつける。「もういい加減にしなよ」と佳恵が止めに入るも春男は「お前さえ、お前さえ現れなければ」の怒りは収まらない。「本当にすみませんでした」直輝は頭を下げることしか出来なかった。
直輝があずさを刺そうとした日、あずさは父・佐島源蔵(佐藤二朗)の病室へやってきた。開口一番に「お父さんお願い、直輝を私の前から消して」という。状況がわからない源蔵にあずさは「お兄ちゃんいなくなっちゃったから、もう頼めるのお父さんしかいないの」という。「お兄ちゃんは私を守るために死んでくれたの」「直輝が私を殺そうとして…だからもう直輝を見なくて済むように消して、ねぇお願い」そうすがるあずさに源蔵は「一緒に自首しよう、一緒に罪を償おう」という。あずさは「今更そんな事できない」と取り乱すが、源蔵はあずさを強く抱きしめて「大丈夫だ大丈夫、もう二度とお前から目を離したりしないから」というのだった。
後日、直輝が源蔵の病院を訪れる。「俺のこと恨んでますか?」という直輝に「お前を恨む権利なんてない。これから一生晴れることのない後悔と共に生きていくつもりだ」と源蔵は話す。そして直輝も「自分自身に決着をつけようと思っています」「失礼します、Mr.ノーコンプライアンス」といってその場を去った。
神代(要潤)は直輝に「復讐を終えた気分はどうだ?」「すっきりしたって顔には見えねえな」と話しかける。抜け殻のような様子の直輝。神代は「佐島家にとってお前は疫病神だったのかもな、いや死神か」という。直輝は「死神…」小さくつぶやくと去っていく。
『俺は間違ってたのかな…』『父さんを殺した人間に復讐する、そのためだけに生きてきたのに』『俺がシロクロつけようとしなければみんな不幸になることはなかった…』直輝はこれまでのことを振り返る。あずさの兄・一郎が自らに銃を撃ったときのこと、神代に疫病神と言われたこと、「後悔と共に生きていく」という源蔵の言葉、「お前さえいなければ」という春男の言葉、そして「ほらね、復讐なんてやめなっていったじゃん」と倒れるレンの姿…。
直輝は、いまだ病室で眠り続けるリコを見舞うとふらふらとした足取りで屋上に向かう。そして「もう終わりにする」「パパ…今から行くからね」つぶやきながら屋上のヘリへと迷うことなく進んでいく。そのとき、パンダちゃんねるLIVE配信のお知らせ音が鳴る。不思議に思って携帯を開くとそこには、昏睡状態のはずのミスパンダが映っている。「どうも、みんなシロクロつけてる?パンダです」元気そうなミスパンダは「これまでは飼育員の言う通りにシロクロつけて来たけど、グレーな事件はなくならない。だからこれからは好きにやろうと思う」と宣言する。そして「私が嫌いなグレーなやつを片っ端からボコボコにする。最初のターゲットはこの人」といったその先には、椅子に縛られた神代の姿があった。「あることないこと勝手にテレビで放送する報道ディレクター。さっそくやっちゃいます」そういうとミスパンダは神代に棒で殴りかかる。神代がぐったりするとミスパンダは仲間を呼ぶといって馬やライオン、トラなどの被り物をしたメンバーを招き入れて『ザ・サファリパーク』のメンバーと彼らを紹介する。そしてもみ消し上手な政治家や胡散臭いお金儲けをしている社長など上級国民に向けて「グレーな人達、覚悟して待っててね」と手を振ると配信を終える。
以前神代が所属していた全日テレビではミスパンダが現れそうなところにスタッフを向かわせてスクープを狙う。テレビのニュースではミスパンダの犯行予告によって政府の関係機関に厳戒な警備態勢が敷かれたと放送している。そして街中にミスパンダをひと目見ようと大勢の野次馬が集まっているようだ。
喫茶店GOBANでこのニュースを見ていた春男と佳恵。すると店のドアが開く。そこにはミスパンダが立っていた。驚く佳恵をよそに春男は「リコか?」と優しく尋ねる。佳恵もミスパンダに近づき「よく顔を見せて」というとリコちゃんだねと喜ぶ。「シロクロつけに来たよ」リコは春男にいう。
「うーん、やっぱり強いな」リコは春男と囲碁の勝負をしている。すると春男は「すまなかった、ずっと謝りたかった。門田先生がリコにしたこと知ってたのに」と話す。リコは「私が望んでやったことだから」と答える。レンの囲碁の腕前を気にするリコ。少しずつ勝てるようになってきたことが分かると安心したような表情を浮かべるリコだった。そして「やらないといけないことがあるから」と店をあとにするリコ。その後姿に「リコ、また打とう」と春男は優しく声をかけた。一瞬切ない顔をしたリコは「ありがとう、加賀先生、佳恵さん。じゃあね」と笑顔で去っていった。
マスコミが躍起になってミスパンダを追うも一向に目撃情報を得ることはできないでいる。
「お待たせしました」と車の助手席に乗り込むミスパンダ。運転席には、ミスパンダにボコボコにされたはずの神代が乗っていた。
直輝を尾行していた神代は、直輝が毎日リコの病室に通っていること、その間一度もミスパンダが姿を現していいないことからリコがミスパンダだと気づいた。神代がリコの病室を訪れるとリコは目を覚ましていた。「私を世間にバラすつもりですか」というリコに神代は「わからなくなった。森島や佐島に会って、俺がやって来たことは正しかったのかどうか…」と迷いを口にする。するとリコは「迷っている間に一つお願いを聞いてください」と頼む。そのお願いとは直輝が死なないように見張ることだった。「飼育員を死なせるわけにはいかないから」と強い決意を口にして「これが終わったら私の正体でも何でも公表して構いません」というリコだった。最後までつき合うと決めた神代は『ザ・サファリパーク』のメンバーを用意した。ディレクター時代の人脈を利用してエキストラを集めて、先日のパンダちゃんねる配信をおこなった。「ミスパンダの正体、番組で放送しましょう」というテレビ局の元同僚に神代は「世の中にはグレーのままの方がいいってこともあるからさ」と断った。そして神代は「さっさとシロクロつけて来い!」そういってリコを送り出すのだった。
パンダちゃんねる配信時の背景からその場所が、自分たちのアジトだと気づいた直輝は急いでアジトに向かう。直輝を待っていたミスパンダは「宣戦布告だよ。これからは好きなように生きるって決めたの」と話す。「みんな私に振り回されちゃってすっごい快感」「私はレンなんかに戻らない、この体は二度と渡さない。覚悟して」というとミスパンダは直輝に襲いかかる。ミスパンダの攻撃を受け止めて防戦一方だった直輝は「下手な芝居はやめろ」とミスパンダを抱きしめる。ミスパンダは、だいぶ前から目を覚ましていたけど自分のせいで色んな人を苦しめるのが怖くてずっと眠っておこうと思ったこと、しかし直輝が死のうとしていたため今回の配信をおこなったことを明かす。「ミスパンダは飼育員(の復讐のため)だけのヒーローじゃないんだよ」というミスパンダ。直輝が「リコ…俺は君を」と言いかけるとミスパンダはそれを阻止するように「私はレンに戻るよ」という。「私の夢はもう叶ったから」と明るくいうリコ。
病室で目を覚ましたリコは、直輝の居ない隙きに母・麻衣子に会いにいっていた。リコが刑務所の面会室で「お母さんに生んでもらって本当によかった、ありがとう」と告げて立ち去ろうとしたとき、麻衣子が「ずっとリコのこと考えていた」といった。「なんて酷いことしたんだろう、ごめんなさい」という麻衣子は最後に「リコ生まれてきてくれてありがとう。私の娘でいてくれてありがとう」と告げた。
この出来事を「私のたった一つの夢は叶った」「私は十分幸せをもらったから何も未練はない」「あとは私の代わりに死んじゃったレンに幸せになってほしい」とリコは話す。直輝が「リコ…」と呼びかけると「違う!私はミスパンダだよ」と否定する。そして「飼育員さん、私を檻から出してくれてありがとう。飼育員さんのおかげで私は全部シロクロついたから、私は檻の中に戻りたい」という。その決意を受け止めた直輝は「ミスパンダ、君に会えてよかった」とキスをする。そして「さようなら、ミスパンダ」そういうとミスパンダの頭を撫でて催眠を解いた。
暗闇の中、レンが目を覚ます。すると近くにリコが立っていた。「ずっと会いたかった」と再会を喜ぶレンにリコは「今日はお別れを言いに来た」と話す。お別れなんて嫌だというレンに「いなくなっても私はレンの側にいる」「私の望みはレンがこれからの人生を幸せに生きていくこと」と優しくいい「絶対幸せになってね」というとそのまま消えていった。
レンは自宅で目を覚ます。バイトに遅刻してしまうと急いでGOBANに向かう途中、レンは直輝とすれ違うが気が付かずに素通りしてしまう。GOBANに到着すると、常連たちも集まっていてレンの復帰祝いがおこなわれた。さっそく常連たちに囲碁の相手になってほしいと頼まれて嬉しそうなレン。その様子を見守りながら春男と佳恵が話している。最後にリコの催眠を解いた後、直輝は店を訪れて「レンが目を覚ましてもミスパンダと僕の記憶は一切残っていません」と春男らに説明していた。「あんたと両思いになることがレンの幸せになる」という佳恵に直輝は頭を下げて「僕にはレンを幸せにすることはできません」といった。
「これでよかったのかどうか、それをこれから証明していくんだよ!俺たち家族で」という春男の表情は明るく、GOBANの中は優しく穏やかな空気が流れていた。
自分の部屋でひとり直輝が大きな鏡にうつる自分と向かい合っていた。「レン、リコありがとう。ミスパンダ」そういうと鏡の自分に向かってシロップをかけながら催眠をかける。『直輝さんのおかげで前向きになれました』とかわいく告白するレンの顔が消え、『あんたの復讐につきあうよ』と唯一の理解者だったリコの顔が消え、『世の中のグレーゾーンにシロクロつけるんだ』ミスパンダの顔が消える。意識が遠のく瞬間、直輝の目からはひとすじの涙がこぼれた。
「参りました」相手が降参する。囲碁の大会で順調に勝ち進んでいるレン。対局中、着物の襟元には親子3人の写真を入れており「やったよ、リコ」と嬉しそうに報告する。
後日レンはひとりハワイアンカフェに入って実りのフルーツパンケーキを注文する。隣の席に座る女性がトイレに席を立つと彼女の向かい側には直輝が座っていた。直輝の席とレンの席に同時に実りのフルーツパンケーキが運ばれてくる。直輝とレンはシロップをかけながら、見えない何かに導かれるかのようにふたり顔を見合わせるのだった。
【みんなの感想】
30代・女性
必ずしもシロクロはっきりさせることが正しいとは限らない、知らない方がいいこともある、私達の周りには大なり小なりグレーな問題があふれている、そう視聴者の私達に問いかけるドラマだったように思います。リコの願いとおりレンが新しい人生を歩みだし、きっと幸せを見つけるのであろう終わり方はよかったと思います。リコは直輝の想いに気づき、自分だけ幸せになるわけにはいかない、そう思って身を引いたのなら悲しすぎます。ふたりの母親は育児ノイローゼだったのでしょうか?なぜリコだけをあんなに虐げたのでしょうか?当事者でなければ分からない問題があるということの問題提起だったのでしょうか…。レンを守るために殺人まで犯し、リコには生まれてくれてありがとうというのは今更な感じがしました。そもそも母親がリコを殺そうとしなければ、リコとレンは今でもお互いを思いやる素敵な姉妹だったに違いない。母親も後悔していて長年悩み続けたのかもしれない、でも都合が良すぎるように感じました。母親の言葉がたった一つの望みだと言ってしまうリコが不憫でなりません。 最後の場面、もし直輝とレンがまっさらな状態で運命を感じたのなら…春男と佳恵はびっくりしてしまうでしょう。そんな余計な心配をしてしまいました。
40代・男性
森島直輝の催眠術は、やはり危険だったと思われます。その危険な負担を川田リコに負わせてしまった。そして、リコは、公務として評価される事なく、グレーゾーンはグレーゾーンのままでいい事もあるとして、忘れられてしまうのです。 川田リコという女の子っぽい若い女性は、その可憐な容姿と雰囲気のままに、危機管理的には一般人としての暮らしに戻るのです。当初のこのお話は、ミスター・ノーコンプライアンスという男性が威厳を持った依頼を森島直輝に。その依頼人は、実は法務大臣だったので、直輝の責任は、公に近いニュアンスのものだったのですが。 ミスター・ノーコンプライアンス・左島源造法務大臣の隠し罪状が発覚して、すべてのニュアンスが全く違ったものになりました。危険度からくる森島直輝の罪の意識は、爆発的に大きくなり、一時は自殺しそうな雰囲気にまでなったのです。 その直輝の危機を救ったのは、ミス・パンダ・川田リコの下手な芝居だったのですが。神代一樹の捕縛は実は神代の協力によるもので、ミス・パンダの凶暴さがなりを潜め、リコの素直な要請が受け入れられるというシロクロつけに変わっていました。何をしでかすかわからない、ワイルドなミス・パンダのファンには少し残念なトーンダウン。その一因は、ミスター・ノーコンプライアンスの期待侵害でした。世の中の変革は、スローダウンし、また、コツコツと働き出した平凡なリコと直輝。機を見るなり敏。そういう機会はまだやって来ていないというのが、「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」の総括です。
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