主演:玉木宏
WOWOW (日曜日22時00分~)
【内容・ネタバレ含む】
【#01】
営業マンの男性(山崎裕太)は、取引先に電話をかけながら営業車に乗り込む。電話を切って一息つこうとタバコを咥えた時、「キャー」と言う女性の悲鳴と同時にドスンと営業車に衝撃を受ける。フロントガラスは割れ、血しぶきが飛び散っている。男性は恐る恐る車を降りる。車の上には、転落死した男性の遺体があった。
太陽新聞社会部の記者・一本木透(玉木宏)は、会社の仮眠室で目を覚ます。一本木が共用スペースの水道で歯磨きをしていると、同僚・若山綾子(結城モエ)が「当番でもないのにまた泊まったんですか」と呆れ顔で話しかける。若山は「ちょっと臭います」と控えめに指摘して立ち去った。その後、編集局に行った一本木は新聞を手に取る。そして『ビル屋上から男性転落死。本郷正樹さん(29)が背中から血を流した状態で車の上に倒れており、病院で死亡が確認された。喫煙所のある屋上で刺され、転落したとみられる』という小さな記事が気になった。
その時、編集部デスク・黛真司(長谷川朝晴)がやって来て、一本木を呼ぶ。黛は、社外論説委員を勤める毛賀沢達也(酒向芳)の不倫隠し子騒動について本人からコメントを取ってくるよう指示する。一本木は「若山に行かせればいい」と反論するが、黛は毛賀沢の手癖の悪さを考慮したのだった。一本木は「名峰学院大学生物学部…」と毛賀沢の経歴を口にした。
本郷の転落現場にフードを被った男(松田元太)が現れた。男は周囲を気にしながらも屋上のフェンスに上ると転落場所を何枚も撮影した。
一本木は、名峰学院大学にやって来た。毛賀沢は反省する様子もなく「生物学的に遺伝子のせいだ。人類の種の保存に忠実に貢献しただけだ」と飄々と語る。毛賀沢の研究室を後にした一本木は、学生相談室へと向かう。すると学生との面談を終えた心理カウンセラー・小川万里子(高岡早紀)がちょうど部屋から出てきた。小川は一本木の大学時代の先輩だった。マスコミ研究会のメンバーについて懐かしそうに話す二人。一本木は「政治部記者からカウンセラーになった先輩の方がよっぽど意外だ」と言う。「政治家のたぬき親父を詰めるよりも、悩める若者を導く方がよっぽど意義があると思わない?」と小川は笑う。
一本木が大学に来た理由を知った小川は「あれはただのエロ親父よ、学生を口説いているとか悪い噂もよく聞く」と話す。その時、学生相談室の入口に男子学生・江原陽一郎(松田元太)が立っていた。江原は思いつめた表情で、『こころの専門家が一緒に考えます』という入口の言葉を指でなぞる。その時、一本木と小川は部屋から出てきた。小川が江原に心配するような表情を向けると、江原は帽子を目深に下ろして走り去った。
一本木が編集局に戻ると、部の全員が集まってテレビを見ている。画面では社内報が流れている。太陽新聞社代表取締役・松本誠二郎(大石吾朗)から大事な話があると集められたようだ。「300人の人員削減が必要」松本の発言に社内がざわつく。その後、編集担当取締役・吉村隆一(渡部篤郎)が編集局へやって来た。吉村は、記者達も削減の対象である事を告げてより良い記事を書くように激励する。一本木の後輩・大熊良太(金井勇太)や若山は、ここぞとばかりに記事の質について提言し、黛も社会部が力を入れている『犯罪報道シリーズ』について吉村に説明をする。すると社会部部長・長谷寺実(八十田勇一)が読者の声として『綺麗事ばかりで当事者に寄り添っていない』と言う苦言の投稿を読み上げた。吉村は「記者の慟哭を書ける人間が太陽新聞に居るかという事か…」と言って一本木に視線を送った。
一本木が印刷される新聞を眺めていると「ここ、腹を括るにはいい場所なんだよな」と吉村がやって来た。「今刷っているのは明日の過去」一本木はそう呟いて立ち去ろうとする。吉村は「あれ、書けないか?記者の慟哭だよ」と一本木に提案する。「辛いのは分かるが今こそ記者の叫びを読者に見せる時ではないか」と言う吉村に一本木は「俺に書く資格があると思いますか」と問う。吉村は「お前にしか書けない、お前にしか」「関係者は皆亡くなっている。他人事でも綺麗事でもない、あれこそ記者の慟哭だ」「記者の享受を示してくれ」と引かなかった。
洗濯機の中で回るシャツを眺めながら、一本木は恋人だった保育士姿の白石琴美(松本若菜)を思い出す。優しく微笑む琴美の表情が真顔になり、一本木は我に返る。新聞に目を落とすと毛賀沢の弁明記事があった。一本木はため息をつくように新聞を閉じた。
編集局に戻った一本木は、パソコンを開く。一呼吸置いてからタイピングし始める。『今から20年前、私は太陽新聞の前橋支局に勤務していた』
ー20年前、群馬ー
一本木は、わたの木保育園へとやって来た。園庭では、琴美が子供達と楽しそうに遊んでいた。一本木は微笑みながらカメラを向ける。一人の園児が「あっ!記者のお兄さん」と気づき、振り向いた琴美も微笑む。一本木は「取材のついでに寄っただけ」と言い「ついで!?」と琴美が怒ったふりをする。そんな仲睦まじい二人のやり取りに園児達は「先生、いつ結婚するの?」「ラブラブだ~」と囃し立てた。
一本木が編集局に戻ると支局長・吉村(渡部篤郎)が「ちょっといいか?」と声をかける。ひとけのない屋上に行くと吉村は「ネタ元からサンズイのタレコミがあった」と話す。サンズイとは汚職事件の隠語だった。他誌もまだ掴んでいない県庁ぐるみの汚職事件。吉村はこれを一本木に任せると言った。吉村は「慎重に裏を取れ」「お前が培ってきたコネも全部使い切れ」「本社連中の度肝を抜いてやろう」とアドバイスと期待を向けた。
一本木が帰宅すると同棲中の琴美が夕食の準備をしていた。一本木は「琴美のお父さん、県庁にいるんだよな」「取材がてら挨拶しようと思う」と話す。ところが琴美は「絶縁状態だから挨拶などしなくていい」と答える。昔気質の父親は、一人っ子の琴美に「仕事を辞めて婿を取れ」と言ったようで、琴美とは意見が合わないようだ。「苦手なのよ、昔から」琴美は寂しそうに笑った。
一本木は、土木課長・御手洗を訪ねる。「上下水道の入札について話を聞きたい」と一本木が言うと御手洗は「いい加減にしろ、こっちは急いでいるんだ」と態度を急変させた。御手洗が立ち去ると一本木に一台の車が近づく。「ちょっといいですか」と言われて一本木は群馬県警本部へと連れて来られた。薄暗い部屋でずっと待たされている一本木は「いつまで待てばよいのか」と苛立つ。
その時、刑事部捜査二課課長・牛島正之(甲本雅裕)がやって来て名刺を差し出した。「汚職の件ですか」一本木が言うと牛島は「時間をかけて慎重に捜査してきたのに、直前でマスコミに騒がれては困る。本丸を取り逃がすわけにはいかない」と答える。「報道の自由がある。取材の邪魔をされる言われはない」と一本木が反論すると牛島は「一緒に来て頂けないかと要請はしたが強制はしていない」と言う。「取材をするなとは言っていない、少し待てませんかとお願いしたいのだ」と牛島は続ける。「逮捕になったらネタを流す」という牛島の条件を一本木は「今書くべきだ」と突っぱねる。牛島は「負けました。お好きにどうぞ」と一本木を解放する。
一本木が去ろうとした時、牛島は「で、上の関与はどこまで掴んでるんですかね」とボソッと呟く。「御手洗課長よりも上がいるんですか!?まさか出納長?」一本木が食いつく。牛島は意味深な態度で「白石出納長…」と言い「どうせ書くなら中途半端は止めな」と一本木の肩を叩いて立ち去った。一本木は愕然として「…白石」と呟いた。
記事が出る前日、一本木は自宅の真っ暗な部屋の中でタバコを吸っていた。そこへ帰宅した琴美は電気を点けて驚く。「今日、早かったんだね」と笑う琴美に一本木は自身が書いた記事を見せる。琴美は愕然とし、「嫌いでも絶縁状態でもたった一人の私の家族よ」と抗議する。「私の父である事に変わりない」と言って琴美は、先日父から電話があって会った事を明かす。
久しぶりに会った父は「家のために婿なんて取らなくていい」「お前が幸せならそれでいい」と言ったのだった。
「あなたに会うの楽しみにしていたのに…それでも出すの?」琴美は責めるような視線を一本木に向けた。そして琴美は家を飛び出した。
翌朝、一本木が出社すると部員達が心配そうな視線を一本木に向ける。そして女性が電話を一本木に渡す。電話は吉村からだった。吉村は「白石出納長が自殺した」と告げる。白石出納長は公園で首を吊ったのだった。一本木は急いで自宅に向かう。玄関の扉が半開きになっていた。部屋の中は荒れて窓も開けっ放しの状態だった。テーブルには、琴美の携帯電話と琴美が使っていた部屋の鍵が置かれていた。
群馬県警で開かれた記者会見で、牛島は「(自殺は)残念ではあるが、全容解明に邁進する」と発言した。記者達が我先に質問をしようと湧き上がる中、一本木だけは肩を落として座っていた。会見が終わると牛島は一本木に「いい記事だったよ」と話しかける。そして「白石出納長が受け取ったのは現金ではなかった」と続ける。白石が受け取ったのは、50万円相当の反物だった。業者が『結婚を控えた娘さんに』と持ってきた物を受け取ってしまったようだ。「なんとも泣かせる話だ」「正直、起訴まで持っていけるか不安だったが太陽新聞さんが社会的制裁を与えてくれてよかった」「なにも死ぬことなかったのに」牛島の言葉に一本木は返す言葉がなかった。
一本木は、琴美の働く保育園へ行く。園庭では、ベテラン保育士に子供達が群がってグズっている。ベテラン保育士が「琴美先生は大切な用事があって遠くへ行ったの」と説明するが子供達は聞く耳を持たない。一本木はその光景を直視する事が出来なかった。足元に飛ばされてきた新聞の一面を手に取り、一本木は目に涙を浮かべた。
『それ以来、彼女が戻ってくる事はなかった。思い当たる先に電話をかけたが彼女の消息をつかむ事は出来なかった』『そして一年後、本社へと転勤になった私にようやく彼女の居場所に関する情報がもたらされた』一本木は綴る。すでに夜が明けていた。
『心臓突然死、まだ26歳という若さだった。』一本木は、棺の中で眠るように目を閉じた琴美と再会した。
一本木は思う、『あの時守るべきは彼女とその家族か、報道の使命か…と。社会正義を貫くことが愛する人を裏切ってしまう事もある。本当に愛していたらペンを折る選択もあったはずだ…スクープの代償は私の未来の家族だった』一本木は投稿した。
編集担当取締役・吉村(渡部篤郎)の元へ、デスク・黛(長谷川朝晴)がやって来た。一本木の記事を載せてよいのかと相談する黛に吉村は「そのまま載せろ」「タイトルは記者の慟哭だ」と即答する。
警察庁、官房審議官となった牛島は一本木の記事を読むと表情を歪めて、掛けていたメガネを新聞に投げつけつように置いた。同じ頃、江原陽一郎(松田元太)の父・江原茂(萩原聖人)も記事を読んでいる。そこへ陽一郎が階段を降りてリビングにやって来ると茂は「仕事に行ってくる」と急いで外出した。陽一郎は、新聞を手に取る。そして食い入るように一本木の記事を読む。さらに自宅の毛賀沢もこれを読み「記者の慟哭か」と小馬鹿にするように呟いた。
通勤時間帯、人々は傘をさしてそれぞれの道を急ぐ。一人のサラリーマンは片手に傘、もう片方で携帯を操作しながら歩いていた。次の瞬間、男性は背後から脇腹を刺されて道に倒れた。
現場に警視庁刑事部捜査一課警部補・望月公平(高橋努)と巡査部長・宮本勇吾(白石隼也)がやって来た。被害者は小林洋次郎(42)の会社員、鋭利なナイフで刺されて即死だった。
一本木はいつも通り出社する。しかし、あの記事を読んだ周囲の人達は変に気を遣い一本木から距離を取る。若山は「いい記事でした」と神妙な面持ちで話しかけた。その時、「バカヤロウ!」と黛の怒鳴り声が編集局に響く。「やられた」黛はそう言いながらテレビをつける。ニュースでは『首都圏3件の殺人事件が同一犯の可能性がある』と伝えている。「ワイドショーなんかに抜かれて何やってるんだよ!!」怒りをあらわにする黛。一本木は、品川中央警察署へと向かう。
警察署にはすでに大熊(金井勇太)の姿があり、なぜワイドショーに情報がもれたのか、望月に詰め寄っていた。しかし望月は「わからない」と困惑しながら立ち去る。悪態をつく大熊に一本木は「お前がリストラ1号に…」と示唆して「抜かれたら抜き返せ」と叱咤する。
その後、大熊と一本木は3件の事件現場を訪れる。1件目はガード下の村田正敏(45)、川崎市職員。6月25日午後11時45分頃、酔った状態で駅から自宅に帰る途中に襲われた。背中を何度もめった刺しにされたようだ。「被害者に襲われる理由は?」一本木に聞かれた大熊は口ごもる。そして「通り魔だと聞いていたので被害者については深く掘っていなかった」と言い訳をする。一本木は呆れた表情を浮かべて天を仰ぐ。その時、道の上部に設置されたカーブミラーが気になった。
2件目の被害者はIT関係の企業に勤める本郷正樹(29)。会社の喫煙スペースから転落した。当初は自殺と思われていたが、刺し傷が見つかったために事件へと切り替わった。本郷にも殺されるような理由は見当たらなかった。
そして3件目が品川駅周辺で刺された小林洋次郎(42)。一本木は「犯行が大胆になっていっている。犯人は捕まらないと余程自信があるのだろう」と分析する。実際、白昼大勢の中での犯行にも関わらず、有力な目撃者はいなかった。
江原陽一郎(松田元太)は新聞記事を切り取っている。机からファイルを取り出した。中には様々は殺人事件の記事がスクラップされている。その中には、3件の刺殺事件も含まれていた。
同じ頃、群馬にある病院の医師・石橋光男(古田新太)も一本木の記事を読んでいた。新聞をどかした下には、令和元年5月4日に産まれた非摘出子・民事優樹の出生証明書が置かれていた。
大学構内の芝生では、学生達が思い思いに寛いでいる。そんな中、撮影した刺殺事件現場の写真を見返す陽一郎は特殊な空気感をまとっている。すると「こんにちは」と小川(高岡早紀)が声をかけた。黙って立ち去ろうとする陽一郎に小川は「何度か相談室に来てくれたよね」と言う。「別に悩みがあるとかじゃないです」「ただ、今だけ楽しければいいみたいな周りの連中を見ていると無性に腹が立つ」と相談室で陽一郎は打ち明ける。「いつから?」小川に聞かれた陽一郎は「一番近くに居た人にずっと騙されていたと気づいた時からかもしれません」と小さな声で答える。「近くの人とはご家族?」と聞かれると陽一郎は席を立つ。小川は「またいつでも来て」と無理強いせずに見送った。
夜、陽一郎がベッドに横たわっていると父・茂(萩原聖人)が「出前でも取ろうかと思って」と部屋をノックする。陽一郎は「食欲ない」と答えた。茂は心配しているものの扱い難さを感じているようだった。その頃、小川は陽一郎の学生データを検索していた。母のむつみは2021年に死亡したとあった。茂はむつみの仏壇に手を合わせた。
翌日、社会部部長・長谷寺(八十田勇一)が「一本木!反響が凄いぞ」と嬉しそうに話す。一本木が書いた『記者の慟哭』は好評で200件以上の投稿が寄せられた。黛は「お前らもリストラされたくなかったら良い記事書けよ」と檄を飛ばす。記者達が持ち場に戻ると一本木は寄せられた投稿に目を落とす。そして一つの封書が気になって開封する。「デスク!!」一本木は珍しく慌てた様子で黛に駆け寄る。「犯人だと!?」黛の言葉に近くで打ち合わせをしていた吉村も話を中断する。『俺は首都圏連続殺人事件の真犯人だ』『俺の言葉は正確に歴史に刻印されなければならない。そう考えていた時、お前の記事を目にした。記者の慟哭、中々面白い』『ボクサーが世間の耳目を集めるためにはリングが必要だ。そこで強敵と戦ってこそ、レジェンドとなる』『俺の場合、リングは太陽新聞だ。そして俺の強敵と成り得る挑戦相手に一本木記者を指名する』『俺は人間をウイルスと定義する。それを裁き、増殖を防ぐワクチンが俺だ』『一本木よ、俺の殺人を言葉で止めてみろ』『これから一字一句の恐ろしさを教えてやる。Vaccine』
【感想】
30代・女性
丁寧に一本木の過去が描かれていた。それが今後どのように作用するのか楽しみ。暗いテーマの中で一本木の正義が貫かれる所を見届けたい。Vaccineの正体とは。一瞬だけ映った出生証明書も謎めいているし、原作も読んでみたくなった。
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