【いりびとー異邦人ー】最終話 感想ネタバレを詳しく(主演:高畑充希)

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主演:高畑充希
WOWOW (日曜日22時00分~) 

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【内容・ネタバレ含む】
【#05】
篁菜穂(高畑充希)は、両親に内緒で有吉美術館の目玉作品の名義を菜穂に変えていた。菜穂と祖父・有吉喜三郎(康すおん)は協力し、喜三郎から借りつけた10億円で10点の名画を購入していたのだ。菜穂はその名画の権利を手放してでも、白根樹(SUMIRE)を世に出そうと考える。しかし樹の師匠・志村照山(松重豊)はこれを拒む。師匠を飛び超えて弟子をデビューさせるのは至難の業。特に縁を重んじる京都という土地柄が更にこれを難しくさせる。
それでも菜穂は諦めなかった。美のやま画廊・美濃山俊吾(松尾貴史)の顔を立てつつ、喜三郎の友人で財界の大立者である立野政志(木場勝己)に接触する。「有吉菜穂の命を預かったと思って、立志堂美術館にお納めください」菜穂の熱意が伝わり、立野は樹の個展開催を約束する。
最初は菜穂に手を引くように言っていた美濃山や木戸(マキタスポーツ)までもが菜穂の熱意に考えを変えていく。そして菜穂が悲しみに暮れた時には、鷹野せん(梶芽衣子)がそっと道筋を照らす。
菜穂の母・有吉克子(森口瑤子)から引きずってでも菜穂を連れ帰るように言われた菜穂の夫・篁一輝(風間俊介)が京都にやってきた。しかし菜穂に東京へ戻る意思はない。そして菜穂は、一輝が『睡蓮』の取引と引き換えに克子と体の関係を持った事を知っている事、父親も本当の親ではない事を明かす。

突然の告白に驚く一輝に菜穂は「私の本当の父は、有吉喜三郎よ」と言って戸籍を見せる。母は、まきのという名で祇園の芸子をしていた。喜三郎は、まきのに産んで欲しいと頼み、父には1年以内に社長の座を譲る事を条件に菜穂を押し付けた。克子は、菜穂が夫の不義の子だと聞いていた。克子は育てる事に抵抗するが、有吉の財産を手放してまで離婚する決断には至らなかった。菜穂がこの事実を知った時には、まきのは既に亡くなっていた。
「…どうしてこんな…」腰を抜かすほど驚く一輝。「一旦、東京に帰ろう」一輝は菜穂の手を取るが、菜穂はこれを振り払い「私は京都で生きていきます」と強く言う。一輝は、「白根樹の個展をウチでやるのはどうだろう」と提案するが、「その必要はない」ときっぱりと断られる。菜穂は「お祖父さまは、父が美術館を潰すかもしれないと予想して私に10点を譲った」と話す。「もうあなたに会うつもりはない。お引取り願えますか」菜穂は突き放すように言った。一輝は言葉を失い、とぼとぼと去って行った。一輝が去ると菜穂は、張り詰めていた糸が切れたようにがっくりと肩を落とした。

一輝は橋の上で、呆然と空を眺めていた。その時、ふと閃いた一輝が胸ポケットから取り出したのは照山の名刺だった。一輝は照山家を訪れ、「来春にたかむら画廊と有吉美術館共同で個展を開きませんか」と頭を下げる。湯呑み茶碗を持つ照山の手が震え、照山は一輝に酒を勧める。樹が二人分の水割りを作る。「この子は10年以上、こうして私専属のホステスをしているんですわ」「この子の母親も祇園の芸者でしたし、血は争えない」照山は言う。水割りを口にした一輝は異変を感じるが照山は特段変わった様子なく飲んでいる。そして照山は、個展を開催すると答える。樹が何か言いたげに一輝を見ている。一輝は樹と目が合うと、睨みつけるように凝視した。

一輝は東京に戻ると「こうするしか菜穂を連れ戻す方法がなかった」と勝手に個展の開催を決めてきた事について父・智昭(菅原大吉)や菜穂の両親に説明する。菜穂が来春に計画しているよりも早く照山と樹の個展を東京で開催すれば、菜穂も一旦東京へ戻らざるを得ないだろうというのが一輝の考えだった。「菜穂を京都に留めているのは白根樹なんです」一輝は説得する。
菜穂は、一輝と別れて京都で子供と暮らす事をせんに打ち明ける。「うちの命が続く限りお守りします」せんは喜三郎から頼まれていたと話す。せんは全てを知っていたのだ。全てを知った上で接してくれていた事を菜穂は感謝する。そこへ克子が突然やって来た。
「東京で産むのよね?」「何か困っていることはない?」これまでの自信家で高圧的な克子の姿はなかった。菜穂は「(せんのお手伝い)朝子(宮田圭子)さんが付き添ってくれるから問題ない」と毅然とした態度で答える。「あなたにとって家族とは何だったんですか」菜穂は問う。「実の親でないと知ってからも母親だと思っていた」と言う菜穂に克子は「私もよ」と言う。しかし菜穂は突き放すように「だったらなぜ絵の事も一輝さんの事も黙っていたのですか」と続ける。何も答える事が出来ない克子に菜穂は「私はこの地で娘と一緒に生きていきます」と宣言する。そこで初めて孫が女の子だと知った克子は「…私は、孫を抱けないのね…」と肩を落とした。
克子は一輝に電話をかけて「あの子はもう戻って来ないわ。あなたのせいよ、あなたが『睡蓮』の売却話さえ持ちかけなければ」と言う。「まだどうなるか分からないじゃないですか!?」高圧的な一輝に克子は「分かるのよ、娘だから」「あの子を遠ざけるべきじゃなかった」と弱々しく答える。

一輝は照山家へ打ち合わせに来た。照山は「新作を用意する」と話す。照山が湯呑み茶碗を持つ手が以前よりも震えている。一輝が「病気ですか?」と気遣うと照山は「お茶が熱いだけだ」と答える。
その頃、菜穂は美濃山と共に立野の元を訪れて契約手続きを行う。立野に「白根さんを連れて東京に行く事も出来たのに」と京都に落ち着く理由を聞かれた菜穂は「自分の感性を信じて貫く場所、それが京都なのだと分かりました」と答える。心配する立野に菜穂は「自分がよそ者である事も自分を貫く事が簡単ではない事も覚悟の上だ」と言う。「一生信じる道にこの身を捧げます」と微笑む菜穂に立野は「ほんまに喜三郎さんにそっくりや」と笑った。「自分の道を行けと言ったのは祖父なんです」と明かす菜穂。
菜穂が20歳の頃、『睡蓮』を前に喜三郎は菜穂に「自分の道を行け」と話したのだった。大きな犠牲も覚悟も教えてくれた気がすると話す菜穂に立野は「あなたは導かれてここに来たのかもしれない」「あなたの行く末を応援させてもらいます」と言い「私も微力ながら」と美濃山も続く。そして菜穂は樹の事を「あの人は描き続ける人です。それが終わったら必ずここへ参ります」と話した。
ここへ来る前、菜穂は樹にメッセージを送っていた。『私たちはどちらかが欠けても成り立たない。あとはあなた自身の意思で外へ』。そのメッセージを読んだ樹は、画材をダンボールに詰め込んでいた。

智昭は「離婚となれば後ろ盾がなくなり、終わりだ」と嘆くが、一輝にはまだ考えがあるようだ。「菜穂が戻る事はないでしょう」と言う一輝。「負けるわけにはいかない」一輝の思いは、照山展を成功させて菜穂に勝つ事へと変わっていた。「お前大丈夫か」心配する智昭に一輝は「何がですか!?」と厳しい視線を向けた。刺々しい態度を取る一輝に智昭は「俺の才覚がなかったんだ、すまん」と謝ったが一輝は無言で立ち去った。

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公園には誰かを待つ菜穂の姿がある。一方、樹は自身の描き上げた絵の前に座る。そこへ照山が歩いてくる音がする。そのミシミシと木が軋む音は、樹の記憶を呼び戻す。
雪の夜、幼い樹は2階の窓から庭に倒れる父を見た。「お父さん!!」樹が窓を開けて呼びかけると照山が振り返る。樹は慌ててベッドの下に隠れた。ミシミシと足音が近づく。ベッドの前で足音が止まると次の瞬間、樹はベッドの下から引きずり出された。照山の手が樹の首を締めるように近づく。すると照山はシーっと言うように人差し指を樹の唇に当てた。「さっき見た事は誰にもしゃべるんやないで」「しゃべったらお前死ぬ事になるで」照山は言った。
樹の部屋に照山がやって来た。荷物が一つもない部屋を見て照山は「お前がここを出ていけるわけがない」と言う。「なぁ、樹」そう言って照山はあの日と同じように樹の腕を強く掴む。樹がこれを振り払うと照山は樹の首を締めようとする。「うあ゛ーーーー」樹は奇声を発すると「わた、し、は…いつ、でも…話、せる」「もう、これ、から、は…黙、らない」「私、を、消し、ても…絵は、殺、せない」と声を絞り出す。「さようなら」樹はそう言うと走り去り、照山は腰を抜かして倒れ込む。
周囲を警戒するように歩いていた樹の表情に少しずつ笑顔が戻り、樹は軽やかに走り出す。日が暮れかけた頃、菜穂の元に樹が走ってきた。「少し肌寒いので中に入りましょう」菜穂はいつもの調子で樹にそう言うと歩き出す。菜穂の背中に向かって樹が「菜穂…さん」と呼びかける。驚いた菜穂は、樹の頬に両手を添える。そして樹をそっと抱き寄せる。樹も菜穂の背中に手を回して涙する。
抱きしめられていた樹は胎動を感じた。菜穂は「美術館で会った時から運命を感じていました、不思議よね」と言う。すると菜穂が「私はいつか会いたいと思っていました」と明かす。樹は「母が亡くなる前に教えてくれました、父親違いのお姉ちゃんが居ると」「有吉菜穂という人だと」と続ける。菜穂には東京に家族が居たために言い出せなかったと話す樹に菜穂は「私達ふたりで生きていこう」と言う。「どちらが、かけても、成り立たない」樹は答えた。

たかむら画廊の出入り口に一輝が突っ立ている。菜穂がやって来ると約束しているようだ。その頃、菜穂は京都の病院で産気づいていた。朝子が実母のように寄り添っている。陣痛に苦しみながらも菜穂は窓に切り取られた紅葉のもみじに目を奪われる。同じ頃、新しい家で樹は大きな紙を広げていた。目の前には、菜穂が見たのと同じように障子窓に切り取られた紅葉のもみじがある。樹は一呼吸すると大きな筆で大胆に大きく朱色の線を描く。
一方、小さい紙に向かう照山。細い筆を持つ手が震える。酒を飲んでも震えは止まらない。照山は苛立つように震える手を何度も机に打ち付ける。そして昔の事を思い出す。

ある日、照山は多川鳳声(二階堂智)の家へやって来た。照山がアトリエに入ると、先客の男性達はよそよそしく帰っていった。鳳声は「立野って人からの発注や」と説明する。仮絵だという鳳声の作品に照山は目を奪われる。「今日、授賞式やったか。おめでとうさん」と言う鳳声に照山は「なんで展覧会に出品しないのや」と尋ねる。鳳声は「展覧会には興味がない。好きな時に好きな絵を駆けたらそれでええ」と欲のない言葉を返した。照山が賞状を持つ手に力が入る。

夜、鳳声と照山は酒を飲む。「お前はなんであんな絵が描けるんや」照山が尋ねるが鳳声は「分からん」と答えて席を立つ。鳳声は相当酔っているようで、廊下の引き戸を開けて座り込んでしまう。照山が立ち上がらせようとした時、鳳声はバランスを崩して庭に転倒する。「大丈夫か」照山が近づくと鳳声は頭から大量出血している。照山は助ける事なく、そっと後ずさりして部屋に戻った。

手の震えが止まらない照山は立ち上がる。その時、照山は急にめまいがして平衡感覚を失う。そして胸元を押さえながら苦しみだす。それでも照山は廊下に出て、かつての樹の部屋へとやって来た。這うようにして部屋の中へと進む照山。樹と呼びたかったのか「たっ」と言った所で照山は息絶えた。

樹は屋上で陽の光を浴びている。そこへ菜穂がやって来た。腕の中には赤ちゃんが抱かれている。菜穂は「菜穂の菜と樹の樹で【菜樹(なつき)】よ」と話す。「いいの?」と自分の1字が入っている事に恐縮する樹に菜穂は笑顔で大きく頷いた。「はじめまして、菜樹」と樹は挨拶する。菜樹は笑って応えたように見えた。温かく柔らかな空気が三人を包み込んでいるようだった。
照山の葬儀に一輝がやって来た。祭壇には照山の作品が飾られ、家政婦の女性が弔問客に作品の説明をしていた。喪主の席に樹の姿がある。一輝の元へ美濃山がやって来て、照山の死因は心不全だが以前から体の中はボロボロでろくに筆も握れない状態だったようだと話す。思うように筆が握れない事から毎晩のように樹にお酌をさせていたらしく「怨念でも籠もっていたのかも」と美濃山はブラックジョークを言う。一輝は照山が「この子は10年以上こうして専属のホステスをしてくれている」と話した事、そして菜穂の実母も祇園の芸子だった事を思い出す。「まさか」一輝が呟いた時、樹と目が合った。「『自分だけ異邦人のようだ』と話していた妻は、ここの人達と共に生きて行こうとしている。そんな彼女を手放してしまったんです、自分から」一輝は後悔にも似た感情を美濃山に吐露した。

京都の街をとぼとぼと歩く一輝。ふと視線を上げると菜穂の後ろ姿が目に入る。「菜穂」一輝が呟くと菜穂が振り返る。しかしその凛とした姿に圧倒されたのか一輝は後ずさりをして、来た道をとぼとぼと戻っていく。「姉さん」そこへ樹がやって来て菜穂と樹は、一輝とは反対の方向へと歩き出す。
鷹野家、菜穂が使っていた部屋には今も樹の『青葉』が飾られている。その部屋で気持ちよさそうに眠る菜樹を朝子が団扇で扇いであげている。「今年の祇園祭には樹さんにも浴衣を着せてあげて」と言い、菜穂は「朝子さん、いつか菜樹にもお願いします」と言う。朝子は「それは長生きしないといけませんな」と笑う。五人の間に穏やかな空気が流れ、ちりんと涼しげな風鈴の音が響く。菜穂は新しい風を感じて微笑んだ。

【感想】
30代・女性
出生の秘密から姉妹関係が明かされる辺りは鳥肌が立った。因果応報の展開を象徴する照山と樹の明暗の描き方が秀逸。作品に登場する絵画も素敵だった。あんなに勝気だった克子と一輝の弱気な姿を表情や立ち姿で表現した俳優さん達も素晴らしかった。最後、10年かけて酒を濃くしていった樹の復讐?が疑惑として残ったところも心地よい余韻。

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