主演:三浦春馬・松岡茉優
TBS系 (火曜日22時00分~)
【内容・ネタバレ含む】
【過去への旅】
~静かなる暁 このことわりを思ひつづけて、みづから心に問ひて曰く 世をのがれて、山林にまじはるは、心を修めて、道を行はんとなり しかるを、汝、姿は聖人にて、心は濁りに染めり~
九鬼玲子(松岡茉優)は、猿渡慶太(三浦春馬)からの突然のキスに動揺して、眠れない夜を過ごしていた。一方、慶太も動揺を隠しきれない様子だ。朝、玲子が朝食を食べていると以前、早乙女健(三浦翔平)が担当していたテレビ企画を別の公認会計士が担当している。番組MCはその会計士に「何か隠していることないの」とゲスな勘ぐりを入れていて、玲子は苛立った様子でテレビを消した。そこへ鮫島ひかり(八木優希)が差し入れを持って慶太を訪ねてきた。「まだ部屋で寝ている」と答える玲子だが、母・九鬼サチ(南果歩)が「猿くんなら6時前に出掛けたわよ」と話す。慶太の事について、普段と違ってどこかぎこちない様子の玲子にふたりは「喧嘩でもした?」と心配する。「喧嘩じゃないなら何なのよ」と言うサチの言葉に、玲子はあの夜のキスを思い出して動揺する。
会社では、入社以来初めて髪を短く切った玲子に、鴨志田(ファーストサマーウイカ)達が「何があったんだ」と不思議がる。そこへ書類を提出しに板垣純(北村匠海)がやってくる。板垣は「髪型似合ってますね」と声を掛けるも玲子は集中していて聞いていない。その後、無断欠勤にしているという慶太について板垣が「何かやらかしたとかですか?」と尋ねると、玲子はまたあの夜のキスを思い出してしまい、机にハンコを押すというあり得ないミスをする。さらに、部長の白兎(池田成志)から計算ミスを指摘される玲子の様子に一同は「あの九鬼さんが!あり得ない!!」と驚く。企画開発部の鶴屋(河井ゆずる)が経理部に書類を持ってきた。いつもと違う様子の猪ノ口(稲田直樹)を心配すると「いつも邪魔する人が居ないだけです」と言葉とは裏腹に寂しそうに答えた。そして鮎川(中村里帆)も「仕事してくれないけど、居ないと何故か欲する自分がいます…」と寂しがる。そんな同僚達をよそに、玲子は定時ぴったりで退社するのだった。
玲子が帰宅すると『お泊りで同窓会なので、猿君と2人きりで仲良くね』とサチからの書き置きがあった。『2人きり』という言葉に動揺してオロオロする玲子。玲子は慶太のペット・AIロボットの猿彦に「あなたのご主人は何を考えているのですか」と愚痴をこぼす。「昨日は早乙女さんに振られて、髪を切り、雷がゴロゴロドッカーンと…」と言い掛けて、玲子は以前慶太が言った「結婚って、雷に打たれるみたいにゴロゴロドッカーン」という言葉を思い出す。そして「これは運命なのか?」と自問自答する。そんな疑問を打ち消すように玲子は夕食の準備に取り掛かった。準備が進み、あとはぬか漬けを用意するだけ。玲子はぬか漬けの壺を取り出す。壺の蓋を開けた玲子は驚く。壺の中にはびっしりと大量の現金書留封筒が入っていたのだ。宛先は玲子、送り主は田中三郎とあった。
早乙女のオフィス。早乙女は、秘書の牛島(大友花恋)に「新しい仕事が決まったら退職金を…」と話を切り出す。しかし、牛島は「辞めるつもりはない」と言って去っていき、早乙女はうなだれる。その時、玲子の傘が早乙女の目に止まった。地位も名誉も失い、妻に離婚を言い渡されて、ずぶ濡れになった自分に優しく傘を差し出して「完璧よりもほころびがある方が素敵です」と告白してくれた玲子を思い出す早乙女。
玲子は見つけた封筒をテーブルに並べて考え込んでいた。その時玄関の扉が開き、玲子は「会社にも来ずに、今まで一体…」と慶太を叱るように振り返ると、そこに立っていたのは慶太ではなく早乙女だった。あの日借りた傘を返しに来たという早乙女から玲子は傘を受け取ろうとするが、早乙女は傘を放してくれない。「勝手かもしれないけど、玲子を傷つけたくなかった」「勝手だけど玲子の気持ち、本当に嬉しかった」という早乙女に、玲子は微笑んで傘を受け取ると「私はもう大丈夫ですから」と告げてお茶を飲んでいくよう勧めた。テーブルの上の封筒に驚く早乙女に玲子は「毎月5万円ずつ10年間」「送り主の田中三郎と言う人には心当たりがない」と話す。「10年前…それってつまり」早乙女は何かに気づくと玲子は「それ以上は何も言わないでください」と話を遮った。そして玲子は明日お金を返しに行くという。「見ず知らずの田中三郎さんにお金をいただくいわれはないので」と言う玲子に、早乙女は同行することを申し出るが、玲子は「あの時、側に居てくれただけで十分ですから」と高校生の時、落ち込む玲子に寄り添ってくれた早乙女に感謝を述べた。その夜、玲子は昔父親が買ってくれた猿のおもちゃを眺めて、当時の様子を思い出していた。
翌朝、慶太の部屋を訪れる玲子。部屋に慶太が帰ってきた様子はなかった。玲子はリュックに封筒を詰めると猿彦に留守番を頼むと言って出かけようとする。しかし、猿彦が玲子を引き止めるように玲子の行く先に立ちふさがる。玲子は「あなた少しご主人に似ています」と言うと嬉しそうにする猿彦をお供に連れて出掛けることにした。外へ出ると板垣が来ていた。板垣は「鎌倉に来たら偶然」と話すが手にはスマホを持ちキョロキョロする板垣は、偶然を装って玲子達に会いに来たことが明白だった。「鎌倉から伊豆へと言うのが、僕の定番の散歩コースなんです」と板垣は言って、玲子と猿彦に同行する。電車の中で考え事をする玲子に、板垣は「早乙女さんのことを忘れるために、暴飲暴食なんでもつきあいます」と励ますが、玲子が考えていたのは早乙女の事ではなかった。玲子は「例えばですが」と強調してから「ガッキーさんがキスをするのはどういう時ですか?」と尋ねる。「それはその女性がとても好きだったときです」「好きな人にしか絶対にしません!」という板垣の答えを聞いた玲子はますます困惑する。そして板垣は「でも猿渡さんみたいなタイプは可愛ければ誰でも手出しちゃいますね」と言って猿彦に怒られる。そして玲子に「大変参考になりました」と言われて板垣はわけが分からなくなる。「さっきの話って玲子さんと猿渡さんの…」と板垣が切り出すと玲子はこれを遮るように「私、いかめしには目がなくて」と反対ホームにあるいかめし屋台を指差す。停車時間は3分しかないと止める板垣に玲子は「足には自信があるので」と買いに走る。しかし、あと少しのところで電車は発車してしまい玲子は乗り遅れてしまった。玲子は「ガッキーさん良い旅を」と微笑んだ。ホームで玲子はいかめしを食べる。「ありがとういかめし400円」と小さな幸せをかみしめる玲子は、猿彦に「これで400円なんてお得だと思いませんか?」と話しかける。わからないと言った様子の猿彦に玲子は「そうですよね、あなたのご主人も4切れのイカリングカレーに1700円も払う人ですもんね」と慶太の笑顔を思い出す。
カフェで慶太の元カノ・まりあ(星蘭ひとみ)は慶太に連絡しようか迷っていた。「そっちから連絡して来い」「結婚って言葉がでた途端に逃げるなんて」とすねるまりあは何か名案が浮かんだようで、笑顔でスマホに向かう。同じ頃、慶太の実家では両親が朝食を取っていた。父の富彦(草刈正雄)が「美味しかった」と言うと母の菜々子(キムラ緑子)は「何が?」と問う。富彦は「この鴨が…」「それよりスープが…」と褒めるが、菜々子が褒めてほしいお取り寄せした鎌倉野菜に気が付かず、菜々子を不機嫌にさせてしまう。そこへ菜々子の元へまりあから電話が入る。
一本先の電車で先に伊豆駅に着いた板垣は、玲子を待っていた。その時、老婦人が小銭をばら撒いてしまい板垣は拾うのを手伝ったり、観光客の若者に道を尋ねられたりしている間に玲子が改札を出て行ってしまった。玲子は送り主の住所付近で近所の人達に田中三郎を尋ねるが、誰も知らないようだ。玲子はそれならばと桃田保男の名前を尋ねるが、その名前も知っている人は見つからなかった。途方に暮れた玲子は「お土産に干物を買って帰ろう」と猿彦に言った。魚屋で干物を買おうとすると店員のおばちゃんが店の裏側に向かって「桃ちゃんが持ってきたやつ…」と呼びかけた。玲子は恐る恐る玲子が幼い頃の家族写真を見せるとおばちゃんは「だいぶ若いけど桃ちゃんじゃない」と豪快に笑った。おばちゃんは「桃ちゃんなら市場食堂にいるよ」と玲子に教えてくれた。それはこの魚屋の通りを挟んだ向かい側だった。食堂に向かって進む猿彦を抱えると玲子は反対方向へ歩き出す。そこへ板垣がやってきた。へとへとな板垣は「玲子さんが心配で探していた」と正直に話す。すると玲子は「電車に間に合わないのは折り込み済みで電車を降りた」「目的地に着くのが怖くて」と板垣に謝った。「中学のとき、私のせいで父が逮捕された」と話す玲子は、昔の私は猿渡さんのように浪費家だったと続ける。さらに打ち込んでいたテニスには莫大な費用がかかっていた。それでも父は何でもやらせてくれて、何でも買ってくれた。そして玲子はそれを当然だと思って父におねだりしていた。そして玲子が中2の夏、会社で経理をしていた父は横領で逮捕されたのだった。家も家財道具も売り、サチが親戚中に頭を下げて横領したお金を返した。玲子の手元には、あの猿のおもちゃだけが残った。その後、父は離婚届を残して行方不明になってしまった。「私があれもこれもと望んだから、父は罪を犯してしまった」「私が父の人生を壊した」「だから会いたくて会いたくない」と話す玲子に板垣は「無理して会わなくてもよいのでは」と励ました。そして優しく差し出された板垣の手を玲子は取った。その時、そばに居たはずの猿彦がひとり歩いて行ってしまっていることに気づく。玲子は猿彦に追いつくと「どうしてあなたはそうやって」と猿彦を咎める。しかし「玲子さん俺が一肌ぬいであげる」優しい慶太の笑顔を思い出して、玲子は笑顔になる。そして玲子は目の前に父・桃田保男(石丸幹二)の姿を発見する。「おとうさん」と玲子が呼びかけると保男は驚きで腰を抜かすも浜辺に走って逃げて行ってしまった。「おとうさん、もう行かないで」玲子の必死の呼びかけで保男はその場に倒れ込む。そして「玲子、すまない」と土下座をする。「テニススクールで才能があると言われた。お金のせいなんかで諦めさせたくなかった」「お前の人生を壊してしまった」と涙する保男。「おとうさんに悪いことさせてまで好きなことしたくなかった」「これだけでよかった」と玲子は猿のおもちゃを取り出した。保男が逮捕された後、玲子は壊れてしまった猿のおもちゃを自分で直していた。「これを繕うところから私の人生は始まった」と笑う玲子。「これを作る会社に就職して経理部で働いている」「お金はたくさんないけど、毎日幸せなの」と話す玲子に保男は安心した表情を見せる。猿彦に促されて板垣は「玲子さんから幸せを教えてもらった」「テニス楽しそうにやっていた」と保男に話す。また玲子がテニスをやっていると知った保男は嬉しそうに笑う。玲子が「これからはおとうさんの人生を生きてください」と言うと保男は涙を流した。そんな保男に近づく猿彦を玲子は「こちらさるわた…否、こちら猿彦さんです」と紹介する。保男、玲子、猿彦の幸せそうな様子を見て板垣は、敵わないな…といったような表情を浮かべた。
玲子の実家には、富彦と菜々子が来ていた。ビールを片手にテンションの高いサチと菜々子に富彦は引き気味だった。せっかくだからと慶太の部屋に入る富彦と菜々子。机の上に無造作に置かれた慶太が幼い頃に考えたおもちゃの企画を手にとって懐かしむ菜々子。富彦はその全てを覚えていた。富彦は「俺と違ってあいつには人を笑顔にする才能がある」と話す。「あいつは責任など背負わん方が輝ける」富彦が慶太に会社を継がせないのは、慶太の才能を失わせないための優しさだった。菜々子は慶太のジャケットをハンガーに掛けると胸ポケットにお小遣いを入れた。そしてジャケットの両袖を手を繋ぐように持って「慶ちゃん、おかあさんは慶ちゃんの一番のファンだからね」とつぶやいた。
帰りの電車内、慶太について玲子は「またどこかに居候先を見つけているかもしれません」と話し、板垣は「迷惑かけられっぱなしだけど、嫌いになれない」と懐かしむ。「へらっと笑ってすぐ帰ってきますか」と微笑む板垣は「また遊ぼうな」と猿彦の頭をなでた。玲子と別れた板垣は人目もはばからず泣いていた。そこへまりあが現れる。慶太ママに気に入られているから外堀から埋める作戦だというまりあに板垣は「もう遅いかも」と助言する。「もう遅いってどういうこと!?」と戸惑うまりあの元に菜々子から電話が入る。菜々子に食事に誘われたまりあは企み顔で板垣に近づく。嫌な予感を察知して逃げようとする板垣をがっしりと捕まえてまりあは板垣も食事に連れていくことにした。
板垣と別れた玲子は帰り道にひかりを見つけて声をかける。観察していると答えるひかりの先には、離婚して家を出ていったというひかりの本当の父の姿があった。改装中のカフェの壁に絵を描く父を見ながらひかりは「養育費を払わないってことは愛してないってことだよね」とつぶやく。玲子は「お金と愛の相関関係については私も分かりかねる」と言いながらも「ひかりさんを傷つけるやつがいた時は私が全力でお守りします」と約束する。そして玲子に同調するように片手をあげた猿彦を見てひかりは笑顔になる。そしてひかりは「ちわーっす」と父に娘であることを明かさずに挨拶すると壁の絵に手を加え始めた。そこには父と小さな娘が遊ぶ姿が愛おしそうに描かれていた。
その後、玲子はひかりの祖父にお線香を上げてきたという富彦に出会う。玲子はひかりが富彦の隠し子だと慶太が誤解していることを告げて、誤解を解くことを勧める。「どこがどうなったらそういう思考回路になるんだ」と呆れる富彦は、迷惑をかけてすまないと謝った。玲子は「猿渡さんが来てから母が毎日楽しそうだ」と話す。そして「私はいつも自分のことばかりで母を笑顔にすることなど考えもしなかった」「猿渡さんは母を笑顔にしてくれる」「だから迷惑などではない」と続けた。富彦に「あいつは君が好きなんだよ」と言われた玲子は「何もかも噛み合いませんが…」と否定する。富彦は、自分と菜々子も噛み合わないが、それでも彼女がいてくれるだけで毎日楽しいと本音を明かした。
帰宅した玲子は、封筒の束をサチに見せて真実を尋ねる。サチは「おとうさんが玲子への仕送りやめたら生きがいがなくなってしまうのではと思った」「生きがいがあればどこかで生きていてほしいな」と話す。玲子はサチの手をとって「お父さんに会いたくないの?」と尋ねる。「お母さん何も気づいてあげられなかったから」と答えるサチの目から涙がこぼれる。猿彦は慰めるようにサチに近づく。サチは黙っていたことを謝り、「結婚するときに渡すつもりだった」と明かした。
その後、玲子は慶太の部屋へやってきた。机の上にはお小遣い帳があった。そこに書き込まれた慶太の字を見て微笑む玲子は、ふと近くのカゴに猿が描かれた豆皿を見つける。そこへやってきたサチは「玲子が欲しがっていた豆皿がいくら探しても見つからないから、代わりに作る」と慶太がひかりに習って作っていたことを話す。豆皿を自分の部屋に持ってきた玲子は、あの豆皿を置くはずだった豆皿布団に慶太の豆皿を乗せた。「なぜこんなにもあの人のことが気になるのでしょう」「この上なくほころびだらけで…」と猿彦に話しかける玲子。「それなのに…」「いつも」思い出すのは優しい慶太の笑顔ばかりだった。「またどこかでお金を使い果たして帰れなくなっているのでは」「お父さんに会ったことも話したい」「寂しい、会いたい」心配や怒りが入り混じり、玲子は本音を口にする。「ほころびを繕っている内に猿渡さんのことを…」
~静かな夜は月を見る。猿の声を聞いて涙をこぼす。まるで篝火みたいに、草むらには蛍が飛び交い、夜明け前の雨は風に舞う木の葉に似ている~
慶太の豆皿に止まった蛍は、縁側で眠る玲子の肩にそっと止まった。翌朝、猿彦が玄関の方へ向かい、玲子は目を覚ます。玄関の扉が開いて、玲子は振り返る。猿彦は両手を上げて喜んでいる。帰ってきたその人の姿を見て、玲子は満面の笑みでうなずいたのだった。
【感想】
30代・女性
はぁ終わってしまった…それでも慶太が関わったすべての人が前を向いて進み出した結末は観ているこちらも温かい気持ちになれました。特に富彦さんが玲子に語った夫婦感が素敵でした。富彦さんは菜々子さんの明るさを面倒に感じているのかと勝手に思い込んでいましたが、「全く噛み合わないからこそ毎日が楽しい」という富彦さんの本音はぐっと心に染みました。そして普段は言葉にしないもののそういった愛情ある家庭で育ったからこそ、慶太は周りの人を笑顔にする才能に恵まれて生まれてきたのだなと納得です。出来ることなら慶太と玲子の幸せツーショットを観たかった、それでも私達の観ていないところでふたりは凸凹互いを補いながら、笑顔の耐えない毎日を過ごしていくのでしょう。